学生と農業の未来を考える ~プロジェクト会員活動レポート⑨~

「意欲的な学生が農業を通じて行動できる居場所を作りたい」という思いのもと、農家と農業に興味のある学生をつなぐための活動を続けている 佐々木汰一さん。『学生のミカタ』という団体を立ち上げ、農家と学生が未来に向かって一緒に夢を描ける場を目指しています。

本記事ではそんな第2期プロジェクト会員・佐々木汰一さんの活動の様子をレポートします!

プロジェクトキックオフ

佐々木さんは静岡県立農林専門職大学の2年生(当時)で、ご実家は島根県の兼業西条柿農家です。大学では農業の専門的な知識はもちろん、農業経営についても学んでいます。

農林専門職大学の学生には、農業の実習機会が限られていたり、生産から販売までの一連の流れを実践する場がないという課題がありました。佐々木さんは、学生と農家の双方にとって良い形でこの課題を解決する方法はないかと考えていました。

2024年7月、emCAMPUS STUDIO にて開催した『ハッカソン~食と農の新たな価値を創造しよう~』に参加した佐々木さん。その後も実家での柿農家としての経験や学生ならではの考え方を活かしながら、意欲のある学生が農業を通して活動できる場所づくりにチャレンジするため、第2期プロジェクト会員としてエントリーしました。

『オープンファーム』を手掛ける胡蝶蘭コマース㈱ 伴さんとのディスカッション
ハッカソン発表時の様子

「アイデアの種」を、「実現の芽」へ!

3ヶ月間の目標をたて、まずはアイデアを形にすることから始めました。「誰のどんな課題をどう解決するのか」ということに立ち返りながら、ビジネスモデルを仮定し、事業計画書を考えます。

並行して、キックオフイベントで出会った JAひまわり・牧野さんの協力のもと、新規就農者の方複数名に直接ヒアリングする機会もいただきました。実際に圃場に赴き、農家さんの深い課題を聞き取ります。

豊川市で国産バナナを生産している 早川さんの圃場にて

学生と農家、双方に向けてヒアリングを続けることで、少しずつアイデアがブラッシュアップされていきました。そして、まずは以下の2つに焦点を当てて活動を進めることとしました。

  • 学生が生産から販売までを経験することができる団体『学生のミカタ』の立ち上げ
  • 活動の一つとして、農家と学生が農業について考えるイベントの開催
アイデアはホワイトボードに書き留めながら、スタッフとミーティングを進めました

プロジェクト会員としての期間は12月で終了しましたが、農家と学生をむすぶイベントの開催に向けてその後も精力的に準備を進めます。

第2期プロジェクト会員成果報告時の写真

『種まきトーク会』開催!

そして2025年3月11日、農家と学生が農業の未来について考えるワークショップ『種まきトーク会』を開催しました。『学生のミカタ』主催のイベントとしては、初めてのものとなります。

食や農に関する取り組みに共感した emCAMPUS STUDIO も主催として入り、JAひまわりさんにもご協力いただいて4名の農家さんをお招きしました。

全体のファシリテーターは㈱Liremの籔内龍介さん。アイデアソン・ハッカソン運営に関して、東三河地域で彼の右に出る者はいません!

当日は参加者22名、オーディエンス9名と定員を大きく超えての参加となりました。学生さんを中心に、この春から新規就農する方、社会人の方など、名古屋から東京のさまざまな地域・属性の方にご参加いただきました。

主催者挨拶に立つ佐々木さん。予想以上の参加者数にかなり緊張した面持ちでしたが、「参加者の皆さんと農家さんがフラットに話せる関係性をつくり、同じ未来に向かって一緒に夢を描ける場にしたい。そして今日話し合いの中で生まれたアイデアが誰かの本気の挑戦につながるきっかけになれば」と語りました。

いよいよワーク本番に入っていきます!
ファシリテーターの籔内さんによる簡単なアイスブレイクの後、JAひまわりの牧野さんより農業全般の課題や、「半農半X」の考え方について話題提供いただきました。

「半農半X」とは、農業を生業の一部としながら、もう一つの仕事(X)を持つライフスタイルや働き方を指します。「自分のやりたいこと(X)」と「農的生活」を両立させることで、持続可能で豊かな暮らしを実現しようという考え方です。新たな就農者を増やし、地域農業の維持に貢献する可能性が期待されています。

もう一つの仕事(X)の中身は、会社勤め、フリーランス、芸術活動、地域貢献、IT関連など、多様な選択肢があります。牧野さんからは、「学生らしい自由な発想で、従来の考えにとらわれない(X)を考えてほしい」とのメッセージがありました。

ランチタイムには、参加した農家さんの農作物を使ったemCAMPUS FOOD 特製コラボ弁当です!

  • 出来農園・出来さんのわさび菜を使ったサラダ
  • 早川さんが生産する『ほのくにバナナ』を使ったサラダ、バナナケーキ、バナナのキャラメリゼ
  • 裕膳FARM・井川さんの アスパラガスの天ぷら・ソテー


このメニューは『種まきトーク会』のため、emCAMPUS FOOD 料理長の高木シェフに特別に作っていただきました。
そしてこのイベントとっておきの魅力、お弁当の感想はダイレクトに生産者さんへ!

参加者の皆さんからは、「初めてわさび菜を食べたが、香りがよい」「皮ごとバナナを食べる感覚がおもしろい」「瑞々しくて、筋張っていないアスパラガスに感動した」などの声をいただき、大変好評な様子でした。

スタッフも美味しくいただきました

ランチタイムを終え、いよいよ課題のヒアリングとアイデアの検討に入っていきます。

事前に各農家さんからいただいた SWOT分析 を参考にしながら、各農家さんがそれぞれ持つ深い課題を聞き取り、それにフォーカスしたアイデアを考えていきます。

そしていよいよ発表へ!
ワークショップ自体は2時間弱という非常に短い時間でしたが、各チームから趣向を凝らしたアイデアが生まれました。

うまいこと言うなあ…
発表に劇が入るチームも!インパクト大!

さまざまな年代・地域の皆さんが集まって生まれたアイデアはどれも魅力的で、「このアイデア実際にやってみよう!」との声も。課題のヒアリング先が目の前にいるからこそ、的確かつ魅力的なものに仕上がったのではないでしょうか。

『学生のミカタ』の活動は続きます!

プロジェクト会員としての活動は3ヶ月で区切りとなりますが、佐々木さんの取り組みは今後も進んでいきます!
次回は、農業の未来を一緒に考えるオンラインイベントを企画中だそうです。今後の情報は『学生のミカタ』Instagram からぜひチェックしてみてください!

【種まきトーク会にてご協力いただいた皆さま】

ひまわり農業協同組合(JAひまわり)
牧野延全さん

 HP:https://ja-himawari.com/

出来農園
出来和幸さん

 主な作物:ゴーヤ、ニンニク、ブロッコリーなど
 Instagram:こちらから!

エレファ by NPO法人介護BKラボ
中野公平さん

 主な作物:玉ねぎの種子、水稲オペレーター
 半農半X :介護・福祉事業(HPはこちら

裕膳FARM
井川裕介さん

 主な作物:アスパラガス、キャベツ、マルベリー
 HP:こちらから!
 Instagram :こちらから!

アグリトラストネットワーク
早川知行さん

 主な作物:国産バナナ、露地野菜、米
 Instagram :こちらから!