本を預けて、誰かとシェアする「自分の図書館」のかたち――株式会社ニデック 戸田篤希さん

プロジェクト会員活動レポート⑭

株式会社ニデックの研究開発本部で新規事業の検討に従事されている戸田篤希さんは、趣味である紙の本のマンガを通じて、「本棚からあふれた本の整理に困っている」「大好きな本を誰かに紹介したい」という二つの課題に着目しました。戸田さんがemCAMPUS STUDIOで取り組んだプロジェクト「シェアライブラリー」は、自身の本を所持したまま保管スペースを拡張し、他者とシェアすることで「不便さ」に価値を見出す、新しい図書のサービスプランです。今回は、emCAMPUS STUDIOを拠点に活動された3ヶ月間のレポートをお届けします!

プロジェクトキックオフ

戸田さんは、紙の本の愛読者として、「紙の本は場所をとる」という課題に直面し、それを解決し「自分の図書館を作りたい!」というアイデアから本プロジェクトをスタートさせました。 キックオフでは、「シェアライブラリー」の概要――本を預け、保管スペースを確保しつつ、その本を誰かにレンタルして布教する――という構想が発表されました。

活動初期は、事業の根幹となるアイデアを検証するため、このプランに興味のある方々へ協力を仰ぎ、「本プランを自分ならやりたいか?」「欲しい機能は何か?」といった点を中心にヒアリング活動を開始しました。

中間報告会

プロジェクトの中盤までに、戸田さんは目標の約半数にあたる13件のヒアリングを完了させました。

活動を通して、以下の重要な気づきを得ました。

  • ターゲット層の適性: 小説やマンガなど「娯楽系」の本を持つ人は、思い入れが強く、紹介意欲が高いため、本サービスへの適性が高いと判明しました。
  • 価格の比較対象: 価格設定について、顧客はレンタル倉庫ではなく、Amazon Primeのような娯楽系サブスクリプションサービスと比較する傾向にあることが判明しました。
  • 事業計画の修正: ヒアリング結果に基づき、当初一つだったリーンキャンバスを、「貸す側」と「借りる側」の視点で分割し、立場ごとの課題やコスト、収益モデルの整理を進めました。

一方、この時点では「借りる側の需要収集が不足している」という課題が見つかり、「借り手側」の需要ヒアリングを重点的に行うという今後の方向性が固まりました。

事業計画の具体化とブラッシュアップ(重要な活動のハイライト)

中間報告後、戸田さんの活動は、事業化の実現可能性を高めるための数値計画の具体化に焦点を移しました。

emCAMPUS STUDIOスタッフとの集中的なミーティングを通じて、市場規模、コスト、収支シミュレーションの検討が重ねられました。

  • ターゲットの再定義: 市場規模の試算において、ターゲット層を特定の属性(例:30代女性)に限定せず、「本の保有数が100冊以上」「アパートなど比較的狭い住環境」「保有本が娯楽系」といった、サービスの価値に直結する実態に基づいた条件で再設定しました。
  • 収支計画の策定: 10年後の売上目標(例:10億円)を設定し、そこから逆算して年次ごとの売上、コスト、利益のシミュレーションを作成しました。
  • 数値の検証: 初期費用(広告宣伝費やシステム開発費)の妥当性、レンタル売上に対する貸主への支払い費用(売上原価)の計上、サービス名の商標確認など、事業を進める上での具体的な論点の修正と検証作業に取り組みました。

プロジェクトクロージングに向けて

最終報告会に向けて、戸田さんは、「シェアライブラリー」のサービス仕様(例:レンタル頻度、1箱あたりの冊数、具体的な料金設定「1,000円」など)を明確に定め、当初のアイデアが活動を通じてどのように「具体化」されていったかというストーリーを、聞き手にわかりやすい発表資料に落とし込む作業を進めました。

プロジェクト会員としての活動は区切りとなりますが、今後、戸田さんの「シェアライブラリー」のアイデアは、ニデック社内での発表を経て、さらなる実現に向けた一歩を踏み出すことになります。