「まちを考える」豊橋駅前再開発事業、emCAMPUS への期待

emCAMPUS EAST は2021年11月27日に開業し、約半年がたちました。WEST棟建設に先立って、旧『開発ビル』の解体工事が進み、まちなかの景色も変わりつつあります。今回、変わる風景とまちなみ、emCAMPUS への期待について、大豊商店街の理事長を務める建築クロノ 黒野有一郎さんにお話を伺いました。

一級建築士の黒野さんは豊橋市生まれ。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、野沢正光建築工房など東京の設計事務所勤務を経て、2004年帰郷を機に一級建築士事務所 建築クロノを設立されました。水上ビルの活性化に尽力されています。

Q. 水上ビルはここ数年でとても盛り上がっているように思います。どんなお考えで取り組みをされているのでしょう?

黒野:僕は、個々の商売がどうこうということには、実はあまり興味がありません。水上ビルという空間で新たに「公共」のようなモノがつくられるプロセスに関心を寄せています。
おおげさに言うと、「成熟した市民による、豊かな市民社会の実現」ということに興味をもっています。行政と民間が共に手を携えて、この「新たな公共」をどうしたら上手く支え合って行けるか? 民側として何を引き受けて、何を委ねるか? というようなことを常に想い、考え、様々な取り組みに挑戦しています。

Q. emCAMPUS にもいろいろなテナントの方が入り、連携のあり方を模索しながらものごとが動きつつあります。水上ビルでの取り組みからアドバイスを頂けますか?

黒野:みんながうれしい、楽しいと思えることは何か?ということが大事です。包括的な方向性を示し、みんなが「そうだね」と思える言葉があるとよいのではないでしょうか?
「ビジョン」というと、達成しなくてはいけない何か、という印象を受けてしまいそうなので、「スローガン」のようなモノでしょうか。

Q. この数年でまちなかの人の流れに変化はあるのでしょうか?

黒野:僕は、マンションの建設により、都心居住が進めばまちなかに人が増える、という考えには否定的な印象を持っていました。
ですが、水上ビルの活性化や再開発などにより、まちに面白い場所が増えたことで人の流れに変化が起こっているように感じています。犬の散歩やベビーカーを押す人など、これまであまり見掛けなかった人たちが目に留まるようになりました。特に『まちなか図書館』が出来たことで、若い人たちにまちなかの居場所が出来たように思います。僕らは、この間長らく、知らず知らずのうちに、若い人たちからまちなかの居場所を奪って来たのかもしれません。

Q. emCAMPUSでは大学との連携による取り組みも進められています。どんなことを期待されますか?

黒野:僕は、大学生に卒業後も豊橋に残ってほしい、定住してほしいという思いはあまり持っていません。建築の仕事などで、豊橋技術科学大学の卒業生に出会うことがあります。卒業後、全国各地、様々なところで活躍されているのだと感じます。少なくとも、豊橋に暮らす間、良い印象を持って卒業していってほしい、という想いで接しています。技科大に限らず、愛大や創造大の学生たちには、豊橋の、まちなかのよき理解者、プロモーターになってほしい。
一方で昨今、学生ボランティアを体のいい(無償の)労働力のように見る傾向があります。このことには大学の先生方や学生たちも敏感です。僕もこの傾向を危惧しています。この点は、大人たちが十分に気を配る必要があります。まちづくりの場面では、学生たちのほかにも、行政や会社から仕事の一環として参加している人、自治会や発展会の役員さんなど役割で参加している人、まちづくりや社会貢献を業としている人など、様々な立場が入り混じっています。ある人はお金をもらい、ある人はボランティアです。まちづくりは、「まだら模様」なのです。参加した全員がフラットにテーブルにつけるように、(報酬や対価となり得る)何かを持ち帰ってもらえるように、お互いがお互いに気を配ることがとても大切です。

Q. 最後に emCAMPUS に向けてメッセージをお願いします。

黒野:穂の国とよはし芸術劇場PLATは、2013年にオープンました。その際、経験豊富なスタッフが集められ、彼らは口々に「10年掛かります」と言うのです。劇場が地域に根付いて、成熟するには最低10年は必要だ、という言葉が今も印象に残っています。そろそろ10年の節目を迎えますが、とてもよくやっていると感心しています。『Sebone』や『あいちトリエンナーレ』にも関わってきましたが、芸術や文化を根付かせるには、長く強い思いを持ち続けなければなりません。まちづくりも同じではないでしょうか。
emCAMPUS もまず10年。頑張って、最初の10年でどのくらいの場所に立てているか? その先に何がみえるか? そんな思いで、焦らず取り組んでほしいと思います。