東三河の生産者を知る!第2弾 百年柿園 ベル・ファーム/鈴木義弘氏 インタビュー

emCAMPUSと関わりの深い生産者さんへのインタビュー企画第2弾は、百年柿園 ベル・ファームの鈴木義弘さんです!
鈴木さんは農民藝術創造俱楽部メンバーであり、令和4年2月には、全国果樹技術・経営コンクールにおいて最高賞にあたる農林水産大臣賞を受賞されました。
そんな豊橋市石巻町の柿畑にお邪魔し、鈴木さんのこだわりや挑戦について伺いました。

生産者さんインタビュー企画第1弾(鈴木農園の鈴木教広氏)の記事はコチラ!

Q. 柿づくりへのこだわりを教えてください。

「柿」を通して少しでも「秋」を長く感じていただけるように商品展開をしています。一般的に柿が流通する時期は10月~11月がメインですが、9月や12月にも出荷できる品種を栽培しています。
9月初旬から収穫ができる『西村早生(にしむらわせ)』は不完全甘柿に分類される柿で、種が入れば甘くなり、種が無ければ渋みが残ります。そして、渋みが残る柿は渋を抜く工程を経て出荷されます。年々西村早生を生産する農家が少なくなっているので、もし、現状の渋を抜く機械が壊れてしまったら、もう直せないかもしれません。
それでも9月初旬から安定して出荷できるよう、ミツバチに受粉を手伝ってもらうことによって種を増やし、甘い柿がより収穫できるように工夫したりしています。

Q. 栽培方法での特徴はありますか?

以前から柿のポット栽培に取り組んでいます。
柿は深根性の植物であり、根は深く太く成長していきます。そのおかげで地表が乾燥した時も地中深くから水分を得ることが可能となります。しかし深く太くなっていった根は木を長く持たせるために、養分を吸収する役割だけではなく、養分を蓄える役割も担うようになってしまいます。
それに比べ、ポットで栽培する場合は細根と呼ばれる細かい根がポット内に張りめぐり、養分を吸収する根となります。そのため肥料のコントロール等がしやすくなり、質の高い実を栽培できるというメリットがあります。
一方で根が細かく、頻繁に水分が足りない状態になるため、自動灌水装置などの環境を整える必要が生じるというデメリットもあります。ポット栽培は限られた容積の中で育てるため、木自体は大きくならず、露地栽培と同じ本数を1/3のスペースで育てることができます。
一言で言うと、小さい木にクオリティの高い実をつけるという栽培方法ですね。
もう一つのメリットとしては、苗木の状態から収穫できる実がつくまでにかかる時間が短いという点です。露地栽培の場合ある程度の収穫を見込むとなると木自体を大きくする必要があり、効率的な収穫ができるまで5年程度かかってしまいます。
一方でポットの場合は木を大きくする必要が無いので、2~3年程度で目標の樹形に達し、1本の木から20個ほど収穫できるまでになります。

Q. 今後の挑戦について教えてください。

現在はポットで栽培した柿を露地に移して育てるという栽培方法に取り組んでいます。この栽培方法には沢山のメリットがあります。
1つ目はポットで育てている段階から収穫が見込めるので、収穫ができない時間が短い、無駄のない栽培が可能になります。果樹は植えた年から収穫が見込めるような農作物等とは違い、収穫に至るまでどうしても年月がかかります。ただし、ポットに長年入れておくのもストレスになるため、ポットから露地に移す栽培方法に挑戦しています。
2つ目は新しい品種のテストがしやすいという点です。
果樹は実がなるまで時間がかかるため、新しく入れた品種が実際に美味しいかテストするにも長い年月がかかります。ポット栽培であれば早い収穫が可能となり、地面に植えた木を引っこ抜く必要もないため、短いスパンでテストをして納得した品種を露地に入れることができます。
3つ目は一般的な露地栽培とは違い、枝を支柱に誘引し樹形をコントロールすることによって作業の効率化が図れる点です。例えば収穫においても、高さのある木よりも横に伸ばした木のほうが、脚立を使う必要がなくなり効率的に収穫ができます。
その他、果樹栽培で最も難しい作業の一つである剪定作業に関しても、一つひとつの枝が見やすく管理されているため、パートの方にもお願いできるようになりました。

このような取り組みに関しても、結局は結果を出して人に真似されるようにならないといけないと思っています。近年柿を作る農家も減少傾向です。考え方によっては、真似をされるという事は産地にとってはマイナスかもしれませんが、柿づくりに同じ気持ちで携わっている全国の柿農家のプラスになればと考えています。
また、今後も新しい品種に挑戦していこうと思っています。果樹において新品種を広めるために、現状は早くても10年程度かかってしまいます。商品への追求をすることはもちろん、早く広くその魅力を伝えるには、宣伝・発信が必要であると考えています。
emCAMPUSの屋上農園では、生産者から消費者への発信をしつつ、消費者が「この商品は美味しいから作って」という消費者側のニーズも発信できるようなったらいいなと考えています。明確なニーズ・売り先がある状態であれば柿の栽培量は増えると思っています。まずは自分から。今年も1種新しい品種を屋上に上げる予定です。

インタビューを通して

生産者さんインタビュー企画第2弾は、百年柿園 ベル・ファームの鈴木義弘さんにお話しを伺いました。インタビューを通して、鈴木さんはとても高い視座を持ちながら柿の栽培を行っていると感じました。
今後の挑戦をお聞きした際に、独自の栽培方法に挑戦しているお話をいただきましたが、挑戦の理由は、自分の柿が売れるためだけでなく、地元の柿農家さん・全国の柿農家さん・次世代の担い手のために挑戦しているという印象を受けました。
なんとこの畑では、自動運搬ロボットの実証実験も行っているようです。
次世代の担い手という部分では、小学校への出前事業などにも積極的に参加し、講義をしているようです。インタビューの締めくくりには、若手農家にとっていい先輩になりたいと熱く語ってくれました。

今回インタビューさせていただいた、百年柿園 ベル・ファームの鈴木義弘さんの柿は9月中旬ごろからemCAMPUS FOODの MARKETにて販売されます。是非こだわりの柿をご賞味ください!