教員が輝くことが出来る未来を創る~小田祐路さん~

~プロジェクト会員活動レポート⑪~

「先生になりたい」――多くの学生が抱くその純粋な思いを、理想だけでなく現実の喜びとして育める社会へ。今回は、教職学生特化型学校バイト求人サービス『EduShift』を考案し、教員が輝ける未来の教育現場創造を目指す、emCAMPUS STUDIO 第3期プロジェクト会員、小田祐路さんの3ヶ月間のレポートをお届けします!

理想と現実のギャップから生まれた『EduShift』の着想

小田さんが教員の道を志したのは、中学生時代の恩師との出会いがきっかけでした。生徒一人ひとりに真摯に向き合い、教育に情熱を燃やす先生の姿に憧れを抱き、中学社会科の先生を目指すようになりました。そして高校では「教育コース」のある学校に進み、3年間で多くの学びを経て教師になる夢を更に膨らませました。大学でももちろん教職課程のある学部に進学。しかし、大学の講義で知る教育現場の現実は、小田さんの理想を大きく揺るがすものでした。

「過酷な労働時間」「モンスターペアレンツへの対応」「深刻な教員不足」――。テレビやニュースで目にする教師を取り巻く厳しい環境は、決して他人事ではありませんでした。さらに追い打ちをかけるように、かつて小田さんが憧れた恩師までもが、教職を辞めるという現実に直面しました。この出来事が、小田さんにとって大きな転機となります。

「本当に、このままでいいのか?」

就職活動を控えた大学4年生の時、小田さんは自身の将来と日本の教育の未来について深く自問自答しました。その中で導き出された答えは、「やはり教員になりたい。でも、このままではいけない。自分が教育現場を変えるんだ」という強い決意でした。

学校や行政の内部からではなく、起業家として外部からアプローチすることで、「教員一人ひとりの業務量を適正化し、教員が輝ける世界を創造する」という目標を掲げた小田さん。SSS(※1)として活動した自身の経験から、教育現場で学生が働くことを斡旋する、学生特化型学校バイト求人サービス『EduShift』というアイデアを思いつきます。

※1:SSS(スクール・サポート・スタッフ)…教員の事務的業務をサポートするスタッフのこと。教員免許は必須ではなく、教員が行う児童生徒への指導や教材研究に注力できるよう、教員の負担軽減を目的としています。2018年度から教員の働き方改革の一環で配置されるようになりました。

現場の声からサービスモデルを構築:『EduShift』の挑戦

2024年夏に学生向け起業家育成プログラム『火-Okoshi』への参加をきっかけに、emCAMPUS STUDIOのプロジェクト会員となった小田さん。

2025年1月31日に開催されたキックオフイベントでは、自己紹介、プロジェクトスタートの背景、3カ月間の取り組み目標といった内容で発表を行いました。

★3ヶ月のスタートを切るキックオフイベントの様子はこちらからご覧いただけます。

すでに大学生側へのヒアリングを重ね、潜在的なニーズの掘り起こしができていた小田さん。次は実際に教育現場で働く先生方やかつて働いていた方々の「生の声」を聞くことに注力するために、emCAMPUS STUDIOのスタッフと共に、教員向けアンケートを作成しました。
結果、34名もの先生方がこのアンケートに協力してくださり、そのうち14名には個別インタビューも実施することができました。

学生側と教員側の両方から得られた貴重な声を基に、『EduShift』のサービスモデルはブラッシュアップされていきました。そのモデルは、SSSという現状の制度に『EduShift』を組み込むことで、市の教育委員会、小中学校、大学生がより深く繋がれる、というものです。『EduShift』により、SSSの派遣人数の増加と、学生と学校の両者の要望に合わせた派遣が可能になることを目指します。
更に、

  • 市の教育委員会:学生の早期囲い込みにより講師登録者数を上げ、講師登録斡旋業務の負担を軽減
  • 小中学校:要望に合わせた人員が確保されることで教員の労働時間削減
  • 大学生:学生時代から現場経験を増やすことで、卒業後のギャップをなくし早期離職を防ぐ

という、3方にとってWin-Winとなる仕組みを想定しています。

サービスモデルの検証に向けて、小田さんはemCAMPUS STUDIOスタッフと共に、教育委員会用と大学生用の2種類の検証用チラシも作成しました。

教育委員会向けのチラシ(オモテ面)
教育委員会向けのチラシ(ウラ面)
大学生向けのチラシ(オモテ面)
大学生向けのチラシ(ウラ面)


2025年5月8日のクロージングイベントでは、この3ヶ月間の歩みを振り返り発表しました。
上記の2種のチラシを活用し、今後はさらなるヒアリングと情報収集を進めていく予定です。

★クロージングイベント(成果報告会)の詳細はこちらのページもぜひご覧ください!

現役教師としての経験を力に:未来への挑戦は続く

現在、小田さんは大学を卒業し、中学校の非常勤講師として働きながらプロジェクトを継続しています。教師として現場で得られる実体験は、まさに『EduShift』をさらに進化させるための貴重な学びとなっています。教職学生と現場の先生たち、そして教育委員会の方々を繋ぎ、「働き続けたい」と心から思える教育現場を創るために、小田さんの挑戦はこれからも力強く続いていきます。

教員が輝ける未来の教育現場創造を目指す、小田さんの歩みに今後も注目です!

★小田祐路さんのFacebookはこちら