豊川から目指せ「東京ばな奈」超え!?国産『ほのくにバナナ』の商品化に向けた挑戦 ―― 早川知行さん

プロジェクト会員活動レポート⑰

起業・創業・新規事業の伴走支援プログラムである emCAMPUS STUDIO プロジェクト会員制度。その第5期会員として活動された、愛知県豊川市で国産バナナを生産する、アグリトラストネットワーク代表の早川知行(はやかわ ともゆき)さんの3ヶ月間の活動の様子をレポートします。

元金融マンという異色の経歴を持つ早川さんは、「儲かる農業」を実現するため、2024年から国内流通量わずか0.1%と言われる希少な国産バナナの栽培に着手。
「東京ばな奈」のような地域を代表する銘菓(お土産)を作りたいという熱い想いを胸に、この3ヶ月間、マーケティング調査や専門家へのヒアリング、仮説検証に奔走しました。

ほのくにバナナの魅力とは?

2024年から国産バナナの生産を始めた早川さん。『ほのくにバナナ』は愛知県豊川市で栽培されています。「穂の国(東三河の古称)」と、豊かな水源をもつ「豊川」に由来して名づけられました。

その最大の特徴は、農薬不使用・化学肥料95%カットで栽培されていること。輸入バナナでは検疫上難しい「完全無農薬」を実現しているため、皮ごと食べられるほどの安心・安全を誇ります。

また、一般的なバナナよりも約1ヶ月長い150日間の栽培期間を経て収穫されるため、果肉は太く、ねっとりとした濃厚な甘みと芳醇な香りが特徴です。

現在は「豊川こだわり農産物」にも認定されており、1本300円~という高付加価値バナナとして、地域の直売所やマルシェで人気を博しています。

3ヶ月間のチャレンジの様子

早川さんの今回のプロジェクト会員期間の目標は、単にバナナを売るのではなく、将来的に「豊川の新しいお土産(銘菓)」を開発するための土台づくりでした。そのために行った、この3ヶ月間の濃密で多角的なアプローチをご紹介します。

東三河フードクリエイターアワードへの登壇

9月19日(金)に開催された「東三河 FOOD DAYS 2025」内の「東三河フードクリエイターアワード2025」に登壇。豊川のお土産づくりへの熱い想いをピッチしました。この登壇を通じて、商品開発や運営に協力してくれる「仲間」を集めることを目指し、多くの地域事業者やシェフとの接点を作ることができました。

各プレイヤーへのヒアリング

「豊川銘菓」を作るため、地域のキーマンたちへ徹底的なヒアリングをおこないました。ヒアリングを続けていくうちに、いわゆる「お土産」ではなく、大切な人と一緒に食べたいと思えるような「手土産」となる商品を作ることが、「ほのくにバナナ」のブランド価値につながるのではないか、という仮説を持つようになりました。

<ヒアリング結果より一部抜粋>

  • 高付加価値の国産バナナを安価な土産菓子にしてしまったらもったいない( フードクリエイターアワード審査員
  • 工場ライン生産にすると何tという量のバナナが必要。高付加価値で、小ロット展開が向いているのでは( 株式会社ヤタロー 常務執行役
  • 国産バナナを題材として生徒にお土産、手土産になる商品案を出してもらうのはどうか( 浜松調理菓子専門学校 校長
  • 豊川市も新しいお土産が欲しい、ニーズはたくさんある。しかし開発は簡単にはいかない。以前開発した際は、販路が確立されておらず、一過性のものとなってしまった。開発と販路は両輪で進める必要がある。( 豊川市観光協会
  • バナナケーキで皮ごと入れブレッド(パン)として打ち出し、朝食として習慣化する売り方。販路作成の重要なエビデンスとなるため、皮に含まれる栄養価、成分がデータで見える化するべき。都心で展開し、フレッシュのバナナを買いに豊川への流れが理想ではないか。( emCAMPUS FOOD 料理長

ヒアリングを続けていくうちに、大量生産の必要な、いわゆる「お土産」ではなく、大切な人と一緒に食べたいと思えるような「手土産」となる商品を作ることが、「ほのくにバナナ」のブランド価値につながるのではないか、という仮説を持つようになりました。

アンケート調査

消費者195名に向けたおアンケートを実施。「お土産」と「手土産」に対する意識の違いや、求めるものを調査しました。 その結果、消費者が「国産バナナを使ったお土産」として求めているのは、単なるバラマキ菓子ではなく、「日持ち」「見た目」「個包装であること」を重視した、少し特別感のある「手土産」であることが判明。これにより、目指すべき商品のペルソナ(ターゲット像)が明確になりました。

愛知大学との成分分析の研究

「皮ごと食べられる」という価値を科学的に証明するため、愛知大学の山口教授およびゼミ生との連携をスタートさせました。 輸入バナナとの差別化ポイントである「バナナの皮」の栄養価や成分をデータで見える化し、エビデンスに基づいたブランディングを行うための共同研究を進めていく計画です。

Webページのプロトタイプ作成

emCAMPUS STUDIO の IT相談窓口( 合同会社Z2A )を活用し、情報発信の強化に着手。
ノーコードツール「Studio」を用いたWebページのプロトタイプ作成や、Instagram の運用見直しを行い、ブランドイメージをデジタル上でも確立するための準備を進めました。

今後の挑戦に向けて

3ヶ月間の活動を通じて、「豊川銘菓を作る」という夢に向けた解像度が大きく上がりました。 早川さんは今後、「東京に行けばみんなが東京ばな奈を買うように、豊川に来たら『ほのくにバナナ』を買いに行く」という未来を描いています。

そのために、まずは豊川市内でのファン作りを固めつつ、ヒアリングで得たアイデアを元に、コンフォートやパウンドケーキ、あるいはアスリート向けの機能性食品など、具体的な加工品開発のパートナーシップを広げていく予定です。

「儲かる農業」を体現し、地域の耕作放棄地問題や後継者不足といった課題解決にも寄与する早川さんの挑戦は、まだ始まったばかりです。

『ほのくにバナナ』問い合わせ先

希少な国産バナナ「ほのくにバナナ」の生育状況や販売情報は、公式Instagramで発信しています。
マルシェ出店や納入状況の情報は、インスタグラムを中心に発信中です。

  • Instagram : @agri.trust.network
  • 主な販売場所(収穫時期による)
    • グリーンセンター豊川、音羽、一宮
    • 産直ひろば小坂井
    • 豊穣屋(イオンモール豊川内)