「植物との対話」豊橋技術科学大学 高山弘太郎先生

インタビュー者:豊橋技術科学大学 先端農業・バイオリサーチセンター センター長 高山 弘太郎 先生
東三河で持続可能な世界に向けて社会課題に取り組む食・食文化の創造者(東三河フードクリエイター)を見つけ、日本や世界に発信していく東三河フードクリエイター配信。
今回は 豊橋技術科学大学 先端農業・バイオリサーチセンター センター長 高山 弘太郎 先生にお話を伺いました。
Q. 高山先生はどんな技術を研究をしていますか?
農業に使える技術を開発しており、特に施設園芸をターゲットにした技術開発を行っています。
施設園芸は露地栽培と比べて環境を制御することで高い生産性を1年間継続できます。
どのように環境を制御すると一番利益率が高くなるのかを研究しています。
施設園芸は昔「温室」と呼ばれており、暖かい室内で作物を育てることで寒い冬でも作物生産をできるようにしたのが始まりです。
現在取り組んでいるテーマは、二酸化炭素の量を制御することによって光合成を促進させ収穫量を増やすための技術開発です。
植物を育てることの基本は「どれだけ光合成をさせたか」になります。
今までの農業では、光合成の量を視覚的に見ることはできなかったのですが、私達のグループでは、生育している作物の二酸化炭素の吸収量をダイレクトに計測して、光合成を正確に把握して、そこから作られる糖(デンプンなど)の量を計算し、その糖から作られる果実の重さを計算することで収穫量の予測が可能になる仕組みを提案しています。
他には、画像計測ロボットを開発して、葉、茎、果実が大きくなるバランスを可視化する技術も開発しています。

Q. 高山先生がこの研究を始めようとしたきっかけは何でしょうか?
学生時代にスピーキング・プラント・アプローチに興味を持ったからです。
スピーキング・プラント・アプローチは、さまざまなセンサーを用いて植物の生育情報を取得して分析し、それに基づいて環境を制御することです。
大学生の頃研究室を決める際に、当時スピーキング・プラント・アプローチの本が出ており、それを読んだことがきっかけでその研究をやっている研究室に行こうと思いました。
学生時代はインターネットなども普及しておらず、なかなかスピーキング・プラント・アプローチの社会実装が難しかったですが、近年、インターネットやディープラーニングが普及したことで、スピーキング・プラント・アプローチの社会実装が大きく前進したと思っています。

Q. 高山先生の今後の展望を教えてください!
今までは、植物を計測して、その情報を人間(農家)に提供していました。
そしてその情報を基に人間に判断をしてもらいました。
これは、過渡的な段階だと考えています。
今手掛けているのは、光合成を最も低コストで最大化するための環境制御のモデルの作成です。
光が強い時ほど光合成をしてもらいたいので、そのタイミングで二酸化炭素を与えます。
しかし、光が強い時ほど温室内の気温が高くなり換気(室内と屋外の空気の入れ替え)が必要になります。
換気をしてしまうと、与えた二酸化炭素が屋外に逃げてしまうので、その屋外に逃げた分の二酸化炭素は無駄なコストとなってしまいます。このような複雑な状況をセンシング技術で正確に把握しつつ、最も利益率が大きくなる適時適量の二酸化炭素供給を行うことが出来る環境制御を目指しています。
まずは豊橋技術科学大学の中庭の小さいモデルハウスから始めて、愛知県内で大きなモデルケースを作成していきたいです。
Q. 今後の東三河の食や農に対してどのような未来を期待していますか?
地域の中で二酸化炭素の循環が出来るような社会に期待しており、そのために様々な働きかけも行っています。工場から排出された二酸化炭素を植物に吸わせて地域内の二酸化炭素排出量をゼロにしていけば、地球にも優しいですし、地域が一体となっていくと思います。
この地域は農業が盛んであり、工場も近くにあるので、このような二酸化炭素の地域内での有効活用も可能だと考えています。
これは他の地域では実現できないので、この地域特有の農業の形になると思います。また、二酸化炭素を地域インフラとして提供できれば、二酸化炭素が欲しい施設園芸の生産者が全国からこの地域に集まってくると思います。

トピック「実は私は…こんな人!」
今回は豊橋技術科学大学の高山先生に話を伺いました。その人柄を紹介していきます。
私は結果が上手くいかなかったり違う結果が出ても全然イライラしない人です。
違う結果が出ても発想を変えたり、その結果の解釈を変えることで今まで考えていたものよりももっと良いものが生まれるかもしれないと考えています。