農家×クリエイターの可能性を、次のステージへ―― JAひまわり佐藤光さん

伴走支援プロジェクトレポート 最終回

プロジェクト概要

【プロジェクト名】
農家×クリエイターマッチング事業

【取り組み内容】
JAひまわりの佐藤 光さんが提案した「農家とクリエイターのマッチング事業」をテーマに、東三河地域の農家とクリエイターをつなぐ新たなサービスづくりを目指し、サーラグループでは伴走支援を行ってきました。

本プロジェクトは、農家とクリエイターをつなぎ、農産物の魅力を分かりやすく伝える手段を増やすとともに、その効果を検証する取り組みです。多様化する消費者の情報収集行動の中で、地域農産物の魅力が適切に伝わる環境づくりを目指しています。

第1回の記事では、佐藤さんがこのアイデアを考えた背景や、農家とクリエイターをつなぐことで生まれる可能性をご紹介。第2回の記事では、生産者へのヒアリングを通して見えてきた課題から、当初想定していたモデルを見直し、「生産者団体の販促支援」や「流通・小売を巻き込んだプロモーション」へと視野を広げてきました。

そして今回、実証実験として実施したSNSプロモーションが一区切りを迎えました。

約半年にわたる伴走支援を通して、実際にどのような成果が生まれたのか。そして、取り組みを通して佐藤さんが見つけたものとは――。

SNSを活用した実証実験。約4万回の視聴を獲得!

今回の実証実験では、新城市の「鈴木製茶」さんを対象に、地域のクリエイターを活用した情報発信に取り組みました。

主に発信についての悩みや課題感をヒヤリングする佐藤さん

当初はショート動画を中心としたプロモーションを予定していましたが、打ち合わせを重ねる中で、より自然な口コミに近い形で商品を知ってもらうことを目指し、Instagramのストーリーズを活用する方法へと変更。

7月19日と7月26日の2回にわたり投稿を行いました。
その結果、2回の投稿で合計約4万回のインプレッションを獲得。

「買ってみたい!」「この商品、知っていました!」といった反応も寄せられ、地域の消費者に商品を知ってもらうという点では、一定の成果を上げることができました。

また、クリエイターのフォロワーと鈴木製茶さんが持つ既存の顧客層では属性が異なるため、これまで商品と接点のなかった層へ情報を届けられたことも、今回の取り組みの大きな収穫です。
一方で、短期間での販売数や売上への直接的な影響は、現時点では明確には確認できませんでした。

実際の投稿

「見てもらう」から「買ってもらう」へ

今回の実証実験を通して見えてきたのは、SNSで認知を広げることと、実際の購買につなげることの間には、もう一段階の仕掛けが必要だということでした。
たとえば、投稿を見た人が「気になる」と思ったあと、

「どこで買えるのか」
「どんな商品なのか」
「まず少量から試せないか」

といった情報がスムーズにつながることが重要です。
今回も、道の駅もっくる新城、フードオアシスあつみ、emCAMPUS FOODなど、実際に商品を購入できる場所について情報発信を行いましたが、認知から購入までの導線をさらに設計する余地がありました。

「もっと地元の人に飲んでもらいたい」「普段使いしてもらいやすいほうじ茶を、もっと知ってほしい」。

佐藤さんが実証実験を通して感じたのは、単にSNSで商品を紹介するだけではなく、その先にある「売れる仕組み」まで考えることの重要性でした。

実証実験から見えてきた、佐藤さんならではの強み

今回のプロジェクトでは、SNSやクリエイターの活用だけでなく、「農家さんの商品をどう売るのか」という経営・流通の視点も重要なテーマとなりました。特に佐藤さんが強く意識するようになったのが、商品の「出口」です。

どれだけ魅力的なプロモーションをしても、注文を受ける体制や配送、梱包、送料、販売場所などが整っていなければ、継続的な販売にはつながりません。

「ただECを始めればいい、ただインフルエンサーに紹介してもらえばいい、ということではない」
農業の現場を知り、流通や販売にも関わってきた佐藤さんだからこそ、今回の実証を通して見えてきた視点です。

一方で、今回の取り組みを通して新たな課題も浮かび上がりました。
農家とクリエイターをつなぐだけなら、案件ごとのマッチングで終わらせることもできます。
しかし、佐藤さんが目指すのは、それだけではありません。

農家さんの課題を理解し、商品の特性や流通状況を把握したうえで、どのクリエイターと組むのがよいのか、どのような発信をすればよいのか、そしてその先の販売までどうつなげるのか。
そこまで踏み込めば、より大きな価値を生み出せる可能性があります。

一方で、そこまで一つひとつの案件に深く関わると、対応できる件数は限られます。

「個人としてならできることでも、企業として事業化するには仕組みが必要」
プロジェクトを進める中で、佐藤さん自身もそんな難しさを感じるようになりました。

だからこそ今後は、どこまで関わるサービスなのか、誰を対象とするのか、どのような価値を提供するのか、を明確にしていくことが重要になります。

マイクロインフルエンサーを、地域の力に

今回の経験から、佐藤さんが新たな可能性として考えているのが、地域のマイクロインフルエンサーを活用した仕組みです。全国的に知名度のあるインフルエンサーではなく、地域の暮らしや食、農業に関心を持ち、東三河の魅力を日常的に発信している人たちです。

そうしたクリエイターを地域でつなぎ、農家さんが利用しやすい価格や仕組みで活用できれば、これまでとは違った販促の形が生まれるかもしれません。

「地域の良さを伝えたい!」という思いを持った人たちと、地域の農産物を届けたい生産者をつなぐこと。
今回の実証実験を通して、その可能性が少しずつ見えてきました。

「結果が出たか」だけではなく、「やってみたから見えたこと」

今回の取り組みでは、約4万回のインプレッションという成果が生まれましたが、短期間で売上に直結させる難しさも明らかになりました。
しかし、佐藤さんは今回のプロジェクトを振り返り、「結果がすぐに出る、出ないだけではなく、やってみてよかったと思う」と話します。

実際に農家さんとクリエイターをつなぎ、情報を発信し、消費者の反応を見て、販売までの導線を考える。その一連のプロセスを経験したことで、机上のアイデアだった「農家×クリエイター」という構想が、より具体的な事業の形として見えるようになってきました。

また、今回のプロジェクトを一つの事例として蓄積することで、今後ほかの農産物や生産者に横展開できる可能性もあります。「あと何件か取り組んでみたら、もっと見えてくるものがあるかもしれない」
そんな次の挑戦への意欲も生まれています。

サーラグループとの打ち合わせの様子

挑戦の場が、次の一歩をつくる

今回のプロジェクトは、2025年9月の東三河FOOD DAYSで開催された「東三河フードクリエイターアワード」から始まりました。佐藤さんは、当初は漠然としていたアイデアを、アワードへの応募をきっかけに整理し、言葉にしていきました。

そして、約半年にわたる伴走支援の中で、ヒアリング、サービスモデルの検討、実証実験、結果検証へと、一歩ずつ具体化してきました。

約200名の前で自身の取り組みを発信することは、単なる成果発表ではありません。
自分が何を考え、何を実現したいのかを改めて整理し、それを誰かに伝える機会。

そして、そこから新たな人とのつながりや、次の仕事・挑戦が生まれる可能性もあります。
「アワードに応募したことで、自分の考えを具体的な計画に落とし込むことができた」

佐藤さんにとって、このプロジェクトは事業をつくるだけでなく、自分自身の考えを深め、次のキャリアや挑戦につなげる時間にもなりました。

東三河FOOD CREATOR AWARD 2025

佐藤さんの挑戦は、これからも続いていく

――農家とクリエイターをつなぐ。

一見するとシンプルなアイデアですが、実際に動かしてみると、情報発信、販売、流通、価格、顧客ニーズ、そして事業としての仕組み化など、さまざまな課題が見えてきました。だからこそ、今回のプロジェクトは「一つのサービスが完成した」で終わりではありません。

実際に動いたからこそ、見えたこと。
誰かに届けたからこそ、生まれた反応。

今回のプロジェクトを通して、佐藤さんの中に生まれたのは、一つの完成した答えではなく、「もっと東三河の農産物の魅力を届けたい」という、次の挑戦への想いです。

これから、ほかの生産者やクリエイターとの新たな出会いが生まれれば、この取り組みはさらに形を変えていくかもしれません。もしかすると、まだ誰もやったことのない仕組みが、東三河から生まれるかもしれません。

その一歩を踏み出すのは、佐藤さん自身。そして、地域の農家さん、クリエイター、企業、消費者など、さまざまな人とのつながりが、次の一歩を後押ししていきます。

「こんなことができたら面白い」から始まった挑戦が、少しずつ誰かの心を動かし、地域を動かす挑戦へ。
これから佐藤さんがどんな人と出会い、どんな仕組みをつくり、東三河の「おいしい」をどんな形で届けていくのか。ぜひ、これからの挑戦にもご注目ください!

佐藤さんの日々の発信はこちら
▶︎ Instagram:@365_oba_taberuman

これまでの活動レポート
▶︎ 第1回「農家とクリエイターのマッチング事業、新しい挑戦のはじまり」
▶︎ 第2回「農家×クリエイターで広げる地域の魅力」

「東三河FOOD DAYS 2026」
2026年9月11日(金)・12日(土)開催
地域の食が持つ可能性を、日本へ、そして世界へひらく2日間。
▶︎ イベント詳細はこちら
https://em-campus.jp/fooddays/